夜走る7 |
あれは中学3年生の事だったと思います。
夏休みも終わって、何かやり残した事があった様な気分のまま何時もの学校生活が始まっていた。
そんな土曜日、友達に誘われ夏に別れを告げる花火大会をやろうって計画にのった。
夏に使い切れなかった花火を各自が持ち寄り派手にやろうとゆうことだ。
桑野山ととゆう小さな山を一つ越えた友人の家、いつもなら問題は無い距離だ。
しかし、丁度ダイナミックに使いすぎて自転車が大破していた私は稼業の配達でかなり近くまで出向くとゆう母が運転する車に乗せてもらい落としてもらった。
7〜8人居ただろうか、花火は勿論すぐに終わった。
花火はすぐに終わる物だ、あっけなく終わる物だ。
..で、女子が『こっくりさん』をやろうと言い出した。
当時、学校から禁止令が発動される程流行していたので皆わいわいと家の中になだれ込んだ。
その女子は、『私、霊感あるのよね〜』とか言いながらチラシの裏に驚く早さで『こっくりさん』ボードを描き上げた。
その興奮気味の真剣さに吹き出した私を、攻める眼差しを放つ彼女の親友の女子。
彼女の指示により北だか南だかの窓を少し開け、真っ暗な中ロウソクに火を点し10円玉に指を乗せた。
つまり、最後は『死ね死ね』の連続になり誰かが悲鳴を上げてってパターンに入った所で退屈な私はオチをつけ終わりを告げる為10円玉から指を離した。
悲鳴、礼儀をわきまえぬ私に『のろわれるよ〜〜』と罵声が轟く中、招集をかけた友人のお母さんが『明かりも点けないで何してるのっハイッ水瓜食べて帰りなさい』と蛍光灯のスイッチを入れた。
水瓜の種を庭に活きよいよくプッと飛ばそうと窓に立った私の後ろからいきなり。
『さっき、手が一本多かった』と呟く声がして振り返ると悪友男子がまっすぐ私の目を見ながら『一本多かった』ともう一度涙目で告げた。
大爆笑して散開。
皆は近所やらチャリやらでさっさと家路に付くが私は歩き、田舎の山越えの道は暗い。
中三の私は幽霊的な事は否定し馬鹿にしていた。
脳みそをフル回転させ茶番と娯楽のオカルトを楽しむ私は大人だよなと自我を保とうと努力した。
でもね............................。
信じていまいと信じていようが今突然、霊が目の前に出ちゃったらどうしよう!
である、これがお化け怖いの正体である。
古代から夜、肉食獣に補食された先祖のDNAが死にたくなければ研澄ませ!と命令している。
左に山の林、右に広がる田んぼ、ぽつりぽつりと光る電柱。
うるさい程のカエルの声の中から異質な音を発見してしまった。
『ギッ』『ギギッ』やばい!近づいて来る、追いかけて来る。
走った走った、微かに光る電柱の明かりにたどり着こうと全力でで走った。
追いかける様に近づいて来る音が止まり息を整え次の電柱を目指したその時まさに私の背中真後ろで強烈な音量で.................
『ギギャーッ』
もう、走れません。
腰が抜けてへたり込んだ私の足下に断末魔を上げながら飛び跳ねるアブラゼミ。
短い夏を精一杯生きたアブラゼミがじたばたしながら羽を動かしていた。
何故そうしたのか未だに分からないが彼を半袖シャツのポケットに恭しく納めて私はまた歩き出した。
もう、あまり怖くなかった。
今日、コンビニへ夜食を買いに行った帰りに『ギッギー、バタタタタ』とゆう音を聞いた。
もう、秋なんだな。