消しゴムの猫 |
娘さんに仕事を手伝ってもらった。
ペン入れした後、消しゴムで下書きの線を消す作業だ。
力任せにゴシゴシこすると原稿用紙がくしゃっとよじれる。
一方方向に何度もスライドさせ丁寧に消してゆく。
また、無言で作業しなくてはならない。
おしゃべりしていると唾の飛沫がインクに付いて汚してしまう事も有る。
彼女はこの作業の難しさを熟知していた。
私は私の作業中、後ろの机でゴシゴシと手伝ってくれた。
「こんなね、消しゴムがけの技術を持っている娘にね、私はね、成りたかった訳じゃやないのよね」
「うん、ありがとう。」
「偉いわぁ、私、どんだけ偉いか分からんわぁ」
「うんうん、バイト代出すからそう怒るな」
その返事が、この猫のマークなのだろう。